女はつらいよ。フォートコーチン1人歩き
インドというとレイプ事件が日本でもたびたび報じられているので、女性にとって怖い国という印象を受けるかもしれない。
実際こちらで暮らしてみると、ひとけのないところに一人で近づかない、夜間出歩かない、極端な肌の露出をしない等、最低限の注意をしていれば特別危険ではないというのが正直な感想だ。
ただ、一人で観光地を歩いていると面倒だなと思うことは多々あった。
ケララ州・コチのフォートコーチンを一人で訪れたときのことだ。
そこは古くから交易で潤い、イギリス植民地時代の景観が残る南インド人気の観光地である。見どころは狭いエリアに集中しているので歩いて回ることができる。
まずは定番のチャイニーズフィッシングネットを見て、海辺を散歩。その後ヴァスコ・ダ・ガマのお墓がある聖フランシス教会へ向かった。
チャイニーズフィッシングネットのあたりは魚屋やフードスタンドがたち並ぶ。
歩いているとやたらとジロジロ見られ、声を掛けられる。
面倒なので、目を合わせないようにわき目もふらずにスタスタ歩くのだが、それでもそこにいるほぼ全員が声を掛けてきた。落ち付かずお店を覗く気にもならない。
とくにひどいのがリキシャ。
私の歩調に合わせたのろのろ運転でずっとついてくる。
歩ける距離だし、そもそも怖いから一人ではあまり乗りたくない。
要らないっ!と強く言い、いったん離れたと思っても、角を曲がるとそこに待ち伏せ。
目的地に着いても、
ここで待ってるから見終わったら言ってね~!
と手を振っていた。
全然懲りない様子に警戒心が薄れ、危うく心を動かされかけた。
その後も次々にお声がかかる。
振り払っても振り払っても付いてくるゾンビのようだった。
途中、道の反対側で同じように一人旅の女性がリキシャに追いかけられているのを見た。
Helloと一言交わしただけだったが、お互い苦笑いでなんだか親近感がわいた。
見てよ、この状況。私達大変よね、と言わんばかりの。
マッタンチェリー地区のJEW TOWN(ユダヤ人街)やスパイスの倉庫街は趣がある。
この話を後日主人にすると、主人が1人で行ったときはそんなにしつこい勧誘はなかったという。
やはり女一人旅は大変なことも多いのだ。
私はリキシャに追いかけられる程度だったが、ホテルの部屋に居座られたとかそういう話も聞く。女性は十分に注意して欲しいと思う。
ただ悪いことだけではなく、良いこともある。
道に迷っていると、若い女の子が大丈夫?声を掛けてくれたり、気軽に写真を撮らせてくれるのだ。
私が小心者じゃなかったらもっと色々な体験もできたと思う。
それでも、道端のごみの山やドブのような川の臭いをかいで、これがインドだ!という感覚を思い出すことができた。
普段は、車に乗って移動し行きなれた場所で買い物するだけ、いかにぬるく生活していたかを思い知った。
たまには一人旅もいいものだ。