わたくし日本に帰らせていただきます
歯の治療のため日本に帰ると決めたら、もう一刻も早く帰りたい。すぐにチケットを手配し、荷物をまとめ、数日後にはインドのマンションを後にした。
それにしても日本に帰ると決まったとたん、心なしか歯痛が引いた気がする…精神的な問題もあるのだろうか。それなら余計に神経を抜くほどではないはず…
家から空港までの道は物凄い渋滞。空いていれば30分程度で着く道のりも、今日はその倍はかかりそう。
ただでさえ交通量が多いのに、空港の荷受待ちなのか、とにかく物凄い量の大型トレーラーが列をなして路肩駐車している。
脇には牛もいるし、普段は温和な我が家のドライバーも交通整理員と喧嘩したりして、なんだか物凄い混沌とした状況である。
さらに混沌に追い打ちをかけるのが、ヒジュラとの遭遇。
ヒジュラとはインドで第3の性に当たる人々。日本でいうおかまちゃん、オネエのこと。
結婚式やお店を回ってダンスをや歌を披露し、お金をもらって生計を立てたりしているようだが、交通量の多い交差点にも出没するらしい。お金を渡さないと、窓ガラスを強くたたいたり、スカートの中を見せつけるという世にも恐ろしい仕返しをされたりするため、怖くて皆お金を渡すと聞いていた。
まさかこんなところで遭遇するとは…
動かない車内から窓の外を見ていると、あきらかに他の物乞いとはオーラの違う、真っ赤なドレスを着た人がいる。物凄い迫力でどんどんこちらに迫ってくるので、どうしても目が離せなかったが、彼はこちらを向くでもなく、後ろの車のほうに通り過ぎていった。
なんとも言えないオーラを持った、わりとキレイな顔立ちのヒジュラであったが、濃いメイクの横顔が過酷な人生を物語っているようでもあった。
空港に着いたあとも、手荷物検査&出国審査の大行列が待ち受ける。
液体(酒)を持ち込めないからといって、行列中に酒盛りをしている人もいたりして、あいかわらず自由度Max!
いつでもどこでも、人間観察をするだけで楽しく過ごせるのがインドの愛すべきところの1つだと思う。
ようやくラウンジ(ITC Hotels Green Lounge)で休憩をとる。
ここのカレーが本当に美味しい。インドで有名なITCホテル系列だけあり、スパイスが絶妙で辛すぎず、どの種類も丁寧に作られており、夜中であってもお代わりしてしまう程。
そのせいで、ゲート集合時間ギリギリにのんびり出発。
私のゲートは14番。
中央ロビーの一番手前、すぐそこに15番ゲートがあるから、その隣だよね、と思ったら、隣は1とある。そこから2、3と続き、14番ゲートはここから一番遠くではないか!
看板にはここから徒歩15分と書かれている!
焦りに焦って、物凄い勢いで歩く歩道を歩き、ゲートに向かう。キャリーケースの車輪が、グィングィンと物凄いを音を立てるので、騒音に慣れているはずのインド人ですら、皆が一斉にこちらを見る。
恥ずかしくて仕方がなかったが、お尻ぷりぷりの競歩よろしく、死に物狂いの早歩きでなんとか間に合った!
ヒジュラに会うのは縁起が良いという説もあるのでそのお陰かもしれない。
インドよ、ありがとう!
しばし日本に帰ります!