「百年泥」について書こうと思っていたら、次の芥川賞が発表されてしまった件
第158回芥川賞にインドを舞台にした小説が選ばれたと聞き、文藝春秋を手にして帰ってきたのが今年3月の一時帰国。
インドに戻ってさっそく読み、何とかブログの記事にしたいと思っていたのに、ダラダラしていたらもう次の芥川賞が発表されてしまったではないか!
あぁ、今更感が拭えないが、前回受賞作 石井遊佳「百年泥」について。
なぜ今まで記事にできなかったかと言うと、正直私にはイマイチ良さが分からなかったからだ。なんて書こう、なんて書こうと思い出しては悩んでいた。
内容をざっくりと言うと、借金返済のため南インドのチェンナイで日本語教師として働くことになった女性が主人公。洪水で氾濫したアダイヤール川の川底にあった100年分の泥が流出するとともに、いろいろな人の人生が時空を超えて交錯するという話。
掘り返された様々な人の人生を見ているとセンチメンタルな気分になった。
私の場合、主人公がインド人とやりとりしているシーンよりも、彼女の元夫やその後付き合った男、人魚のような母親のこと等、彼女自身が日本で体験してきたことの方が面白くて、深く入りこめた。私はまだまだインドのシーンを見て感情移入できる程インドには入りこめておらず、心には日本の風景があるんだななどと思ったりした。
主人公の女性は大変な状況にあるにもかかわらず感情が非常にあっさりしていて、全体を通して軽やかな印象を受けた。
では面白かったかと言われると、正直難しい…。
しかし、今回第159回の発表にお尻をたたいてもらい、遅ればせながら一言書くことができて良かった。
また、著者である石井遊佳さんの受賞者インタビューは大変興味深かった。
小説のネタになればと多様な職業を経験し、小説を書くために36歳の時に東大に入り、仏教を学ぶ。小説を書きたいというだけでこうも人生経験が豊富になるのか。
現在もチェンナイで暮らしておられるので、今後もインドを舞台した小説や、仏教を題材にした小説を書かれるのではないかと期待している。