自由すぎる者たち 牛編
インドでは人間はもとより、色々なものが本当に自由に暮らしている。
前回は犬を紹介したが、今回は牛について。
ヒンズー教徒の多いインドでは、牛はシヴァ神の乗り物として崇められており、殺生は厳禁とされている。中でも白い牛はナンディンと呼ばれ特に神聖視されている。
↑たしかに牛に乗っている
そのためインドでは街の至る所で牛を見かける。
それは田舎でも都会でも同じで、デリー近郊の交通量の多い道路の中央分離帯にも大きな牛がのんびり座っていたりする。
高速道路でも牛が横切るし、牛が原因による渋滞もよくある話。
先日も車の中からふと外に目をやると、牛の集団が通り過ぎていった。
立派な角を持った牛がのっしのっしと歩いていく様は迫力満点!!
子牛も頑張って歩いている。
聞いた話によると、街中にいる牛はたいてい誰かの飼牛で、適当に放し飼いにしているそう。だいたいこの時間にここを通ると、この脇道から牛が出てくる、ということが多いので、毎日一定の時間に決まったルートを散歩していると思われる。
こちらは水牛。
私はいまいち見分けが付かないのだが、インドでは、通常の牛(特にコブ牛)に比べ、水牛は悪魔の化身とか悪魔の乗り物と呼ばれ、扱いが明確に異なっている。
水牛は家畜化され、乳牛となる。日本でメジャーなホルスタインのミルクよりもはるかに濃厚で、牧場の特濃ミルクを飲んでいるかのような味わい。私がいくら日本でスパイスを買ってチャイを入れても、なんだか美味しくなかったのは、牛乳の違いも大いに関係していたと思われる。
そして、搾乳ができなくなった水牛はヒンズー教徒以外の人たちや、国外輸出用の食肉となる。
それから牛の糞は燃料になる。
牛の糞を20cm程の円盤状に固め、天日干し。
家の壁に貼り付けて乾かす家もある。
さすがに都会では見かけないが、農村の方に行くと、まだまだ現役。これを使って煮炊きをしたり、宗教行事を行ったりしている。
そんなインド人とは切っても切り離せない関係の牛。
しかし現実は厳しい。
大抵ゴミ置き場の周りには牛がいて、いつもゴミを漁っている。その姿を見るのはなんとも切ない。
また、一部の過激ヒンズー教徒が、牛を神聖視しない他教徒の人たちに対し暴行したり、殺害するといった事件まで起こっている。
牛丼でおなじみ、吉野家ホールディングスがインド進出を決めたようだが、 どうなるだろうか。
ヒンズー教徒に配慮したメニューとなると牛は厳しいだろうし、かといってそれ以外のメニューだとちょっとがっかりでもある。
今後の様子を見守っていきたい。